CLIENT INTERVIEW

導入企業インタビュー

2026.2.27
製造業

【株式会社たにぐち】先手を打ち、コツコツ続ける。食品業界に先駆けて進める脱炭素経営の形

株式会社たにぐち
株式会社たにぐち
事業内容
チョコレート・焼き菓子等の企画・開発・製造・販売、OEM製造 ほか
企業サイト
https://www.taniguchi-net.com/

株式会社たにぐちは原材料卸からスタートし、チョコレートを中心としたスイーツづくりを通じて、多くの顧客に支持されてきました。約20年前には完全メーカーへと転換。現在は自社ブランド商品とOEM製造の両軸で事業を展開している食品メーカーです。

同社は食品業界でも早い段階からSBT認定を取得し、脱炭素経営の外堀を着実に固めてきました。その背景について、代表取締役会長の谷口様、総務部の高崎様・村尾様にお話を伺いました。
(取材日:2026年2月9日 インタビュアー:ディエスジャパン広報)

世の中の流れを読み、外の形を先に整える

ISO22000

谷口様:今回のSBTを含めて、当社は認証取得に比較的早く取り組んできました。FSSC22000(※)も10年以上前に取得しましたが、当時の食品業界にはまだ数えるほどしか取得企業はありませんでした。

私の考え方は、まず外の形を整えて、それに中身を合わせていくというものです。みんなで「これからどうしようか」と議論するよりも、「世の中の流れがこうだから、いずれこうなる」というところから逆算して形を作っていく。

そうすれば効果が見えてくるので、取り組みを深めていけます。自分たちで情報を取りに行き、先手を打つ。それが基本的なスタンスです。

※ISO22000をベースに、より厳しい追加要求事項を含んだ食品安全の国際認証規格

ファストカーボン導入のきっかけ

谷口様:当社がファストカーボンを知ったのは、商工会議所経由でバックキャストテクノロジー社とつながったことがきっかけでした。同社からディエスジャパン様を紹介いただいてSBT認定の申請サポートをお願いする中で、ファストカーボンを導入しました。

再生エネルギーへの切り替えなどは以前から取り組んでいましたが、CO2排出量をきちんと算出するまでには至っていませんでした。使い始めてみると「思っていた以上にすでに取り組めていた」という気づきもあり、可視化することの大切さを改めて感じました。

高崎様:実務面では、電気・ガスの使用データをもともと総務部門で管理していましたので、そのデータから算出するだけで対応できました。最初の試用版で作成したデータをそのまま引き継げる仕様になっており、2022年・2023年分を改めて計算し直しても、電力会社のデータときちんと数値が合いました。操作で迷う場面もなく、スムーズに導入できました。

村尾様:他のCO2算出ツールとの比較はしていませんが、中小企業版であれば、電気やガスの使用量といった既存データさえあれば計算できます。わざわざ新しいデータを準備する必要がないという点が、何より助かりました。現状を把握するための第一歩のツールとしては、とても良いのではないでしょうか。

CO2排出量の可視化で分かったこと

谷口様:当社では「シンカ活動」という取り組みを3年ほど続けており、コスト削減や生産性の向上に取り組んできました。それなりに効果は出ていたものの、それがCO2削減と具体的にリンクしているという意識は、社内でほとんどありませんでした。

ファストカーボンで数字が見えてきて改めて気づいたのは、生産効率が上がれば当然CO2の排出量も減るということです。シンカ活動で進めてきた機械の稼働時間の適正化といった取り組みが、CO2削減につながっていたことが数字で見えてきました。

省エネ設備の導入や産廃のマニフェスト管理といったハード面も、長年の積み重ねでかなり整ってきています。「案外、脱炭素に取り組めていたんだな」という発見でしたし、数字で可視化できたことで社員にも伝えやすくなりました。

社員の意識を育て、脱炭素を一人ひとりの「自分ごと」に

谷口様:一方で、次の課題も明確になりました。会社の取り組みを社員一人ひとりの意識にどうつなげていくか、という部分です。

そこで、まず社員の脱炭素に対する意識やリテラシーをアンケートで把握しました。その上で、賛同してくれた社員に対して、会社が用意した具体的な取り組みのメニュー(「マイボトルを持ち歩く」など日常で実践しやすいもの)の中から、各自が取り組めるものを選んで宣言してもらいました。

ここで大切なのは「できた・できない」の結果よりも、個人に脱炭素への意識を持ってもらうことです約160名の社員のうち71%が前向きに賛同してくれたことは、十分に高い数字だと受け止めています。

次のステップとして、大阪市のゴミ処理場の見学も計画しています。行政の取り組みの現状を実際に見て学んでもらうことで、脱炭素をより身近なものとして意識してもらえる機会にしていきたいと考えています。

日常の中でできることをコツコツ積み重ねる

谷口様:「脱炭素という言葉だけ聞くと、なかなか自分ごととして捉えにくいものです。ただ、ファストカーボンで数字が見えてきたことで、日常の小さな取り組みが確実に効果につながっていることが分かりました。

それが社員一人ひとりのモチベーションの維持にもつながると思っています。SDGsにしても大きな数値目標を追いかけるのではなく、一人ひとりが日々の行動の中でできることに取り組んでいく。そのバランスを大切にしながら、継続していきたいと思っています。

私はかねてから「社員品質」という言葉を使っています。製品や原材料の品質ではなく、人間としての考え方や姿勢を高めようという意味で使った言葉です脱炭素への取り組みも突き詰めれば、一人ひとりの意識や行動の質をどう高めるかという話です。

世の中に偉い人はたくさんいても、立派な人はなかなかいません。できることをコツコツやり続けられる、そういう立派な社員でいてほしいと思っています。

食品業界の脱炭素と、今後の展望

谷口様:食品業界全体で見ると、脱炭素への取り組みはまだ遅れていると感じます。景気がそれほど良くないこともあり、取り組みの意義は理解できてもコストが上がることへの抵抗感が強いのです。

当社でも2年ほど前からバイオマストレーを導入していますが、やはりコストは上がります。同業他社に話をしても評価されることは少ないですが、異業種の方からはきちんと評価していただける。食品業界全体で脱炭素が広がるには、大手量販店など川下の流通が先導して消費者へ発信していくことが重要ではないかと思っています。

原材料の価格高騰など、食品業界を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。そうした中で、脱炭素への取り組みは単なるコストではなく、企業のブランドとして評価される時代になっていくと見ています丁寧なものづくりと脱炭素経営を両立することが、選ばれる企業への道につながっていくのではないでしょうか。

脱炭素に取り組む企業へのメッセージ

谷口様:長い目で見れば、脱炭素への取り組みは事業を継続するために欠かせないものだと思っています。実際、時期がくれば「やっておいてよかった」と感じる日が必ず来ます。

FSSC22000のときもそうでした。導入当初は「仕事が増える」という反発もありましたが、今では「FSSC認定工場でないと取引できない」というお客様が出てきています。SBTも5年、10年後には同じ状況になるのではないかと見ています。

取引先からいきなり対応を求められたときに慌てないためにも、事前に社内で知識を蓄えておくことが大切です。しかもSBTは年間の維持費がほとんどかからない。早めに取り組んでおく価値は十分にあると思います。

もう一つ、これから深刻化する人手不足という観点からも考えておく必要があります。今の若い世代は、私たちよりも環境問題について学ぶ機会が多かったはずです。

彼らが社会の中心を担う時代に選ばれる企業でありつづけるためにも、今のうちからできることをコツコツ積み重ねていく。結局はそれに尽きるのだと思います。

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