CLIENT INTERVIEW

導入企業インタビュー

2025.6.26
その他サービス業

【株式会社松田商店】CO2排出量を一人ひとりの“自分ごとに”。松田商店が始めた脱炭素経営の第一歩

株式会社松田商店
事業内容
金属スクラップ業・資源リサイクル業・産業廃棄物処理業・ペットボトルを原料とした日用品の製造・販売
企業サイト
https://www.eco-kururin-matsuda.co.jp/

株式会社松田商店は、和歌山県で鉄スクラップや廃プラスチックなどの産業廃棄物を再資源化する事業を展開しています。地域に根ざした資源循環型ビジネスを進めるとともに、子ども向けの体験型工場見学を20年以上にわたって受け入れるなど、環境教育にも積極的に取り組んできました。同社は2024年8月にファストカーボンを導入し、翌年4月に中小企業版SBT認定も取得。和歌山県内で2番目にSBTを取得した企業として、循環型社会の未来をリードしています。その背景について、代表取締役の松田様にお話を伺いました。

(取材日:2025年6月9日 インタビュアー:ディエスジャパン広報)

課題
脱炭素経営を進めたいが、具体的な進め方が分からない

株式会社松田商店の事業内容

松田様:当社は1947年(昭和22年)に和歌山市で古物商・金属屑商として創業し、1990年(平成2年)に法人化いたしました。
以来、金属スクラップや資源ごみのリサイクル、産業廃棄物の適正処理を通じて、地域に根ざした循環型社会の実現に取り組んでいます。
近年では、使用済みペットボトルの再資源化から家庭用品などへの製品化にも力を注いでいます。

また2006年にオープンした体験型工場見学システム「くるくるシティ」は、2025年5月で20年目を迎えました。
単なる工場見学の枠を超えた、テーマパークのアトラクションのような体験型施設へと進化を遂げ、これまでに延べ約10万人にご来場いただいています。
次世代を担う子どもたちに環境への関心を育んでもらえる場になればと願っています。

体験型工場見学システム「くるくるシティ」に登場するリサイクル博士。アミューズメント要素を組み込んだ工場見学は子どもたちも大喜び。

SBT認定取得のきっかけはOZCaF

松田様:きっかけは、OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション(以下「OZCaF」)様から弊社にご提案をいただいたことです。
正直に申し上げると、それまで「SBT認定」という言葉自体を知りませんでした。
もともと、おおさかATCグリーンエコプラザを通じてOZCaF様とはつながりがあり、当社の取り組みをよく理解された上でご連絡をいただいたことに誠意を感じ、前向きに進めることにしました。

OZCaF様からのご連絡がなければ、今もSBT認定のことを知らなかっただろうと思います。

SBT認定取得を検討し始めた際の率直な印象

松田様:調べてみると、和歌山県内でSBT認定を取得している企業はまだ1社だけでした。
今後知名度が上がる制度だと感じ、早期に取り組む意義を強く感じました。
10年前にISO認証を検討した際はコスト面で断念しましたが、SBT認定はランニングコストがほぼかからない点も魅力的でした。

OZCaF様から紹介された和歌山県の補助金制度を利用すれば、導入コストの約半分をカバーできることも後押しとなり、やってみる価値があると感じました。
そこで和歌山県に問い合わせてみると、県もこれから認定取得企業を増やそうとしているとのことで、先日は県からの取材も受けました。

 

SBT認定の取得の狙い

SBT認定取得

松田様:SBT認定を取ることで、ブランドイメージの確立につながるのではという期待を持っています。
まだ取り組みを始めたばかりですが、会社のホームページやパンフレットなどの基本情報だけでは人材を採用するのが難しい時代ですし、私たちのような地方企業、しかも敬遠されがちな業種では、なおさらだと思っています。

だからこそ、会社の取り組みをできるだけオープンに、かつ地球に優しい会社であることを見える形で発信することが大切です。
口でどれだけPRするよりも、国際的な認定である「SBT認定を取得しています」と出した方が、分かりやすくて説得力があります。

採用だけではなく、行政や企業との取引においても、選ばれる会社としてのブランドイメージの構築に、今後SBT認定が役立つと期待しています。

和歌山市内でSBT認定を取得しているのは、現時点では当社だけですが、今後取得する企業が増えていけば、将来的に行政の入札要件に盛り込まれる可能性もあるかもしれません。
そうなれば、さらに認定の価値が高まってくると期待しています。

 

ファストカーボン導入について

ファストカーボン

松田様:ファストカーボンを導入するまでは、毎月の燃料費や電気代をざっくり把握する程度でした。
燃料費や電気代がどんどん高くなる中で「アイドリングをしないようにしよう」「節電しよう」といった大まかな対策はしていましたが、具体的なCO2排出量の数値までは見えていませんでした。

SBT認定のためにファストカーボンを導入して具体的な数値が可視化できれば、自分自身の危機感も増すし、社内での共有もしやすくなると思います。
今後いろいろな形で活用していけることを期待しています。

ファストカーボン導入後の変化

松田様:まだ運用を始めたばかりなので、実際の変化はこれからというところです。
ただデータを見比べていると、昨年より燃料費が少なくなっているという実感はあります。
その理由を考えていくと具体的な改善点や対策も見えてきますし、今後の脱炭素に向けた経営の全体像もイメージしやすくなってきました。

CO2排出の中で、特に影響が大きいと感じている部分

松田様:最もウェイトが大きいのは燃料費です。
当社にはトラックが17~18台あり、常時3台が毎日大阪-和歌山間を往復、小型トラックも和歌山市内で日々稼働しています。

また、リサイクル工場の電気代もかなりの割合を占めています。
以前は軽油で動かしていた機械も電気式に切り替えましたし、ペットボトル工場はすべて電気で動かしているので、電力コストは年々上がっています。

ファストカーボンを導入して気づいたこと

松田様:燃料費が高いことはある程度想定内でしたが、ファストカーボンで排出量を見える化したことで、リフトの燃料費など、これまではあまり意識していなかった部分にも「こんなに燃料費がかかっていたのか」と実感が湧くようになりました。

ファストカーボンの使い勝手

松田様:ファストカーボン導入にあたっては、ディエスジャパン様がきめ細かくサポートしてくださったので、スムーズにスタートできました。
最初に1年分のデータを入力する時は複数名で分担しましたが、毎月の入力作業は10分ほどで終わるので、そこまでの負担にはなっていません。
これまで作業を担当していた経理部門のリーダーが4月付けで専務に昇格したので、今後は別の担当者に引き継いでもらう予定です。

私自身もまだ手探りでファストカーボンに慣れている段階で、いろいろ触りながら活用方法を考えています。

算出結果を、今後どのように活用していきたいか

松田様:数値結果をそのまま見せるのではなく、みんなが分かりやすい形に編集・加工する必要があると感じています。

「何が問題でこの数値が出ているのか」「なぜこのデータを出しているのか」をしっかり伝えられないと現場には響かないと思うからです。
そこから丁寧に初めて、だんだん慣れてきたら「今月はこうだったから、来月はこうしていこう」と、数値目標まで落とし込めるようになればいいなと考えています。

社内共有にあたって編集・加工が必要だと感じた部分

ファストカーボンの数値や文言には、現場のスタッフからすると少し難しく感じられる部分があるんです。
聞きなれない言葉を分かりやすい言葉に置き換えることで「自分ごと化」しやすくなり、現場の行動にもつながっていくのではと考えています。

例えば「燃料費がこれだけかかった」と言われても実感しにくいですが、どの車がどれだけ燃料を使っているか、車番まで示して説明できればドライバーも気をつけてくれると思っています。

そもそも「脱炭素」という言葉自体、まだ現場では十分に浸透していません。子どもでも分かるような「二酸化炭素をたくさん出すと地球に悪い」といった平易な表現で伝えることから始めれば、「自分たちにもできることがある」と納得してもらいやすくなると思います。

現場で働くドライバーやオペレーターが意識して操作してくれるだけで、だいぶ結果が変わってくるのではないかと感じています。

ディエスジャパンのサポートについて

松田様:申請書類の案内が丁寧で、分からないことを質問すればすぐに対応いただけましたし、英語の申請もハードルを感じず進められました。
申請手続きは、ディエスジャパン様とOZCaF様の両社と連携を取りながら進めていきました。

当初は2025年2月〜3月の頭には取得できそうでしたが、途中で提出書類が増えたことで4月になりました。
ただ1月時点で準備自体は完了していたので、あとはディエスジャパン様にお任せし、良い結果につながりました。

過去にものづくりの補助金申請も経験しましたが、今回の方がはるかにスムーズでしたね。
ディエスジャパン様には、本当にがんばっていただきました。

 

今後の脱炭素経営に向けた取り組みについて

松田様:正直、何から始めたらいいのか……というプレッシャーも少しはありました。とはいえ、経営活動を停滞させるわけにはいきませんし、利益をしっかり出していかなければいけません。
仕事を減らすという選択肢も現実的ではない中で、いろいろな視点から可能性を探りたいと思っています。

例えば他社さんが実践されているという「社用車のルート変更」は、当社でも参考にできそうな取り組みです。
また、先日ディエスジャパン様から「みんな電力」を使えばScope2の電力由来の排出量を大幅に削減できる可能性があると伺いました。
他社の再生可能エネルギーは料金が高くなりそうで導入を見送っていましたが、「みんな電力」なら前向きに検討できそうです。

脱炭素経営を目指す企業へのメッセージ

松田様:「地球のために脱炭素経営をしましょう」と言うと、高尚すぎてピンと来ない方も多いかもしれません。
でも「電気代や燃料費が安くなるきっかけが分かるし、もっと経費を抑えられるヒントになるかもしれない」といったリアルな話を伝えれば、興味を持たれる事業者様も増えるのではないかと思います。

ご協力いただき、ありがとうございました。

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