メガソーラーの環境破壊は本当か?土砂災害・森林伐採の危険性とは

家の裏山にいつの間にかソーラーパネルがずらりと並び、緑豊だった景色が一変していく。
そんな光景に、「本当にこのままで大丈夫なのだろうか」と不安を感じる方がいる一方、「日本の未来のために必要な施設だ」と期待を寄せる方もいます。
クリーンなエネルギーとして普及が進むメガソーラー。しかしその裏側で、「メガソーラーの環境破壊」という言葉が深刻な問題として浮上しています。
なぜメガソーラーが環境破壊と結びつけられるのか解説していきます。
なぜ?「クリーンなはず」のメガソーラーが環境破壊と指摘される理由
地球温暖化対策の切り札として、再生可能エネルギーへの期待は世界的に高まっています。
中でも太陽光発電は、日本の貴重なエネルギー源として大きな役割を担うようになりました。
その普及を大きく後押ししたのが、2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT制度)」です。
これにより太陽光発電事業への参入が急増し、特に大規模なメガソーラーの建設が全国で一気に進みました。
資源エネルギー庁のデータによれば、制度開始から2023年度末までに、事業用太陽光発電の導入量は約10倍以上に増加しています。
しかし、この急速な拡大が予期せぬ問題を生み出すことになります。
比較的安価で広大な土地を確保しやすい山林や傾斜地が、メガソーラーの建設地に選ばれるケースが多発。
その結果、本来の目的であったはずの環境保全とは逆に、メガソーラーの環境破壊という、無視できない問題が各地で顕在化し始めました。
メガソーラーが社会にもたらす3つのメリット
まず、メガソーラーがなぜこれほどまでに推進されるのか、その肯定的な側面を見ていきましょう。
地球温暖化対策への直接的な貢献
メガソーラーの最大のメリットは、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーである点です。
例えば、出力1MW(1,000kW)のメガソーラーは、年間に約500〜600トンのCO2排出量を削減できると試算されています。
これは、一般家庭約100世帯分の年間排出量に相当し、気候変動対策への貢献度は計り知れません。
日本のエネルギー自給率向上と安全保障
資源に乏しい日本は、エネルギーの多くを海外からの化石燃料の輸入に頼っており、エネルギー自給率はわずか10%程度です。
これは、国際情勢の変動による燃料価格の高騰や供給不安といったリスクに常にさらされていることを意味します。
太陽光という国内で確保できる純国産エネルギーを増やすことは、エネルギーの安定供給と国の安全保障に直結する重要な国策なのです。
土地の有効活用
後継者不足などで活用が難しくなった農地(耕作放棄地)や工場の跡地などを発電事業用地として貸し出すことで、土地の所有者は安定した収入を得ることができます。
眠っていた土地を価値ある資源に変える力も持っています。
メガソーラー建設に伴う2つの深刻なリスク
メリットがある一方、特に山林開発においては深刻なリスクが指摘されています。
森林伐採による保水力低下と生態系への影響
山林を切り開いてメガソーラーを設置する場合、大規模な森林伐採は避けられません。
森林には、樹木の根が土壌をしっかりと掴み、落ち葉がスポンジのように雨水を吸収する「緑のダム」としての機能があります。
しかし、木々が伐採され、地面がソーラーパネルやコンクリートで覆われると、この保水機能が著しく低下します。
行き場を失った雨水は、地表を勢いよく流れ下り、下流の河川の氾濫や浸水のリスクを高める可能性があります。
大規模な伐採は、地域の生態系を根本から破壊し、希少な動植物を絶滅の危機に追いやることも考えられます。
大規模な造成が引き起こす土砂災害の危険性
山の斜面にメガソーラーを建設するためには、多くの場合、地形を大きく変える「造成工事」が必要になります。
山の木を伐採し、斜面を削り、土を盛る。この一連の工事が、山の本来持つ地盤の強度を著しく弱めてしいます。
特に問題となるのが、豪雨や地震が発生した際の土砂災害の危険性です。
森林という天然の「鎧」を失った斜面は、雨水によって簡単に侵食され、表層崩壊や土石流を引き起こすトリガーになり得ます。
全国のメガソーラー問題
メリットとリスクが混在する中、全国では実際にトラブルも発生しており、対策も進んでいます。
- 災害・景観を巡る住民との対立: 静岡県伊豆の国市などでは土砂災害への懸念から、また長野県の高原地帯などでは景観を理由に、住民による反対運動が起きています。
- 国や自治体による規制強化: こうした状況を受け、国は森林法を改正し、自治体も独自の条例を制定して、災害リスクの高い場所などでの建設に厳しい規制をかける動きが広がっています。
すべてのメガソーラーが危険なわけではない!共存への道筋
メガソーラーのリスク面に焦点を当ててきましたが、全てのメガソーラーが環境破壊につながるわけではありません。
大切なのは、「どこに」「どのように」設置するかです。適切な設置場所(耕作放棄地・工業団地跡地など)
問題の多くは、自然豊かな山林を切り開くことで発生します。
一方で、活用されなくなった土地を有効利用するメガソーラーは、環境への負荷が少なく、むしろ地域に貢献できる可能性を秘めています。
例えば、以下のような場所が適切な設置場所として注目されています。
- 後継者不足などで使われなくなった農地(耕作放棄地)
- 閉鎖された工場の跡地や未利用の工業団地
- 大規模な建物の屋根や駐車場
これらの土地を活用すれば、新たな森林伐採をすることなく、クリーンなエネルギーを生み出すことが可能です。
事業者の対策と自治体のガイドラインの重要性
事業者が、開発に伴うリスクをどれだけ真摯に受け止め、対策を講じるかも極めて重要です。
自治体が地域の特性に合わせた詳細なガイドラインを作成し、事業者に遵守を求めることも不可欠でしょう。
建設前の住民説明会を義務付けるなど、地域住民との合意形成を重視する姿勢が求められます。
環境アセスメントの役割
「環境アセスメント(環境影響評価)」は、大規模な開発事業が環境にどのような影響を与えるかを、事前に調査・予測・評価する手続きです。
この手続きを通じて、事業計画の問題点を洗い出し、環境保全のための対策を検討します。
メガソーラー開発においても、この環境アセスメントを厳格に運用していくことが、無秩序な開発を防ぐための鍵となります。
持続可能なエネルギー利用のために
メガソーラーが、脱炭素社会の実現に欠かせない重要な技術であることは間違いありません。
その一方で、急速な普及の過程で、一部の不適切な開発が環境破壊や地域社会との摩擦を生んだこともまた事実です。
私たちに求められているのは、メガソーラーが持つ「気候変動対策」や「エネルギー安全保障」といったメリットを活かしながら、「災害リスク」や「自然環境への影響」といったデメリットを、いかに最小化していくかという視点です。
エネルギー問題と環境保全を両立させ、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、考え、行動していくことが求められています。
-
担当営業が詳しくご説明いたしますCONTACTお問い合わせ
- APPLICATIONお申し込み